私事ハ初より少々論がこと(異)なり候故、相かハらず自身の見込所を致し候所、皆どふ致し候ても事ができぬゆへ、(始め)に私しおわるくいゝ、私しお死なそふとばかり致し候ものも、此頃ハ皆※(二の字点、1-2-22)何となく恋したいてそふだん致し候よふニ相成、実にうれ敷存候。世上ニ義理太イ分ンわかりたり。
私ハ近日おふゝニいくさ致し、将軍家を地下ニ致候事ができず候時ハ、も外国ニ遊び候事を思ひ立候。二国三国ハそふだんニおふ(応)じ候得へ(ママ)ども、何分時節が十二分ニなく、又長州のよふつまらぬ事ニ致してハならぬと存じ候。
まお(ママ)かんがへ私とても、一生うちニおりてぬかみそ(糠味噌)の世話致すハいやと存候バ、今日ニてよく御存(知)成度候。今私が事あげ致候時ハ、皆大和国ヤマト野州ヤシウやニて軍五、六度も致し候ものをあつめをき、夫をつかい候得バ、どふしても一度ハやりさへすれバ、志をうると存候。然共、中※(二の字点、1-2-22)時がいたらず。

底本:「龍馬の手紙」宮地佐一郎、講談社学術文庫、講談社
   2003(平成15)年12月10日第1刷発行
   2008(平成20)年9月19日第7刷発行
※底本手紙写真のキャプションに、(個人蔵)とあります。
※丸括弧付きの語句は、底本編集時に付け加えられたものです。
※直筆の手紙の折り返しに合わせた改行は、省いて入力しました。
入力:Yanajin33
校正:Hanren
2010年11月11日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。