あらすじ
著者の村越氏が、植物図鑑の批評を求めて、本多静六のもとを訪れたのです。静六は、膨大な図鑑を一人で完成させた村越氏の努力に敬意を表しました。従来の図鑑は植物の名前や形を紹介するにとどまっていましたが、本書は栽培法や加工、利用法まで詳しく解説しており、さらに殖林や木材利用についても触れている点が、静六の専門分野からも高く評価されました。巻末には索引も充実しており、本書を活用する上で大変便利です。静六は、本書が日本の植物を網羅し、実物を見ているかのように解説している点を高く評価し、植物を愛する国民性を持つ日本国民が、本書を通じて植物への理解を深め、愛好心を育むことを願っています。
 著者村越君が訪問されて本書の批判を余に請はれた。そこで余は本書の内容、殊に余の專攻項目に就て目を通したが、先づ第一に余の感心したのは斯の如き尨大なる著述を其の※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)圖の全部から説明の各項まで君一人の手によつて完成せられたといふことである。著述に聊か經驗ある余には君の非常なる此の努力に對し敬意を表せずには居られない。從來此の種の著書は二三にして止まらないが、大抵は各植物の形状及び名稱を知らしめて滿足せるものゝ如く、何れも餘りに啓蒙的であつた。併し本書は各植物の形状特質より、其の栽培、加工、使用法等に至るまで説いてあるばかりでなく、殖林、木材利用等の知識にも相當注意の行き亘つて居ることは、余の專門的見地より特に愉快に思ふ次第である。卷末の用意周到なる索引は、本書活用の上に至便なるものにして從來此の種の著書に其の比を見ない所である。
 かくして本書が我國に分布する植物を殆ど網羅し、總べて實物に就くが如く圖示解説したことは、我が學界のためにも喜びに堪へない次第である。
 元來我が國人は植物を愛好する特種の國民性を有して居るものであるから、本書の如きは是非各戸に備へて、更に深く植物を理解し愛好の念を養成して行く栞にしたいと思ふ。是余が本書を斯界の好著として一般に紹介する所以である。

大正十四年九月
本多靜六
了

底本:「大植物圖鑑」大植物圖鑑刊行會
   1925(大正14)年9月25日発行
※国立国会図書館デジタルコレクション(http://dl.ndl.go.jp/)で公開されている当該書籍画像に基づいて、作業しました。
入力:蒋龍
校正:フクポー
2017年12月26日作成
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