黄菊はすでに散つてしまつた
漕手よ
船路を遠くかへつてくる時
さびしい海鳥はますとに飛びかひ
日は憂鬱の浪にただよふ。
漕手よ
はや君の家の窓に燈火あかりはつけられ
妹はひとり庭にたたずむ
漕手よ、祈祷せよ。

底本:「萩原朔太郎全集 第三卷」筑摩書房
   1977(昭和52)年5月30日初版第1刷発行
   1986(昭和62)年12月10日補訂版第1刷発行
入力:kompass
校正:小林繁雄
2011年6月25日作成
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