最初は、俳優に試験的にやらしてみましたが、演つてゐるうちに色々と私の註文も出て来る。そして、その註文も或る所までは果されて行くことが分りましたから、この分で行けば、私自身がもう少し勤勉になつて、色々註文が出せたなら、可成りな所まで、演出の効果を挙げて行くことが出来るとおもひました。
相憎、途中で病気に掛つたりして、稽古はほんの二三度しか見ることが出来ませんでしたが、もう少し丁寧に見ることが出来たなら、もつともつと良くなる望みがあると思ひます。
兎も角も、今度の演出によつて、われわれは、われわれの俳優の演技といふものに対して、嘗て考へてゐたよりは広い希望を持つことが出来ました。これは非常に喜ばしいことだとおもひます。
底本:「岸田國士全集20」岩波書店
1990(平成2)年3月8日発行
底本の親本:「演劇新潮 第二巻第七号」
1927(昭和2)年7月1日発行
初出:「演劇新潮 第二巻第七号」
1927(昭和2)年7月1日発行
入力:tatsuki
校正:門田裕志、小林繁雄
2006年2月20日作成
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