あらすじ
ある日、著者は、随筆の題材として、自身が愛する花の名前を用いることを思いつきます。そして、その花にちなんで「狐の手套」という題名をつけ、自身の随筆集をまとめることを決意します。この「狐の手套」は、夏の強い日差しの中で紫色の花を咲かせる、ジギタリスの花の異名です。
 昔からよく隨筆の題にはその筆者の好む花の名などが用ひられてゐる。あれは何んとなく氣もちの好いものである。いま、ここにすこし隨筆めいたものを集めたついでに、ひとつその眞似をしてやらうと思つて、こんな題をつけて見た。因みに『狐の手套てぶくろ』と云ふのは、あの夏の日ざかりに紫いろの花を咲かせるヂギタリスの花の異名ださうだ。

底本:「堀辰雄作品集第五卷」筑摩書房
   1982(昭和57)年9月30日初版第1刷発行
底本の親本:「堀辰雄作品集二・美しい村」角川書店
   1948(昭和23)年10月30日
初出:「本」江川書房
   1933(昭和8)年2月1日
入力:tatsuki
校正:染川隆俊
2010年3月5日作成
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