あらすじ
五里の青野を訪れた七人の学生たちは、日が暮れて宿を求めます。老いた家主は、二部屋に分かれた簾障子の奥に、乳母と美しい娘の姿を見せます。学生たちは、娘に百合の花を贈りますが、それは親のいない娘への哀れみと、同時に、その美しさへの賛辞でもあったのです。
五里(り)の青野(あをの)に行き暮れて、
山下街(やましたまち)の片門(かたかど)に、
いかで一夜(ひとよ)の宿(やど)乞ふと
都(みやこ)のなまり、――うらわかき
学生(がくせい)づれの七人(しちにん)は
手にこそしたれ、百合の花。

家の下部(しもべ)が、老(お)い屈(かゞ)み、
嗄(しはが)れごゑに、竹箒(たけばうき)
とる手とどめて物いへば、
二室(ふたま)へだてし簾障子(すしやうじ)の
奥に乳母(うば)よぶ――こは人の
百合の花なる白き影。

親なき君をいつく家(や)の
あなあやにくと、しとやかに
乳母はいなみぬ。よし、さらば、
そのあえかなる君祝ひ
捧ぐと與(あた)へ行き過ぎぬ、
七人(しちにん)の手の百合の花。
了

底本:「沖縄文学全集 第1巻 詩」国書刊行会
   1991(平成3)年6月6日第1刷
入力:坂本真一
校正:フクポー
2018年12月24日作成
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