あらすじ
古唐津の素晴らしさは、古瀬戸や古備前など他の古陶器と比較しても際立っており、日本の美意識に満ち溢れた野趣をたたえています。朝鮮の手法から出発した古唐津は、次第に日本固有の美しさを身につけ、力強く変化に富んだ作風へと進化を遂げます。その過程で、朝鮮陶器の弱点を克服し、純粋な日本精神と洗練された趣を融合させ、見る者の心を強く惹きつける魅力を放つのです。
 古唐津というものの良さは、日本陶器として古瀬戸、古備前、古萩、古伊賀、古信楽等の類品と共にいずれを姉とし、いずれを妹とすべくもないまでに、著しく他に優れた良さと日本趣味に富む野趣を存する。
 古唐津は最初全く朝鮮の手法になっているが、漸を逐って、日本固有の美形を具えて、一種の体をかまえて来る。随って、底力を欠く朝鮮陶から救われて、力強き作風と変化し、純然たる日本精神を発揚すると共に、典雅な情趣を帯び来って、まことに心憎いまでに人の心に迫って来るものがある。
(昭和二十八年)

底本:「魯山人陶説」中公文庫、中央公論新社
   1992(平成4)年5月10日初版発行
   2008(平成20)年11月25日12刷発行
底本の親本:「魯山人陶説」東京書房社
   1975(昭和50)年3月
入力:門田裕志
校正:木下聡
2018年2月25日作成
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